1:長時間化している、日本人の睡眠
その年の注目キーワードを、ランキング形式で毎年末に発表しているRoomClip Awardでは、2022年「快眠ベッドルーム」が第3位にランクインしました。消費市場を見ても、睡眠にまつわる様々なプロダクトやアプリなどのサービスが注目された年でもありました。2023年は、このトレンドがさらに加速されると私たちは考えています。

上図は、令和3年 総務省統局 社会生活基本調査にて発表された、20年間における国民の平均睡眠時間の推移を表したものです。その差はわずかではあるものの、減少傾向で推移していた睡眠時間が直近5年の間に増え、2021年はこの20年間の中で最も長くなっていることがわかります。
睡眠への関心度合いは、住まいと暮らしのコミュニティに限らず、国民全体で高まっていることが予想されます。
2:寝室も「映え」が重視された2010年代
ここからは、RoomClipに調査のフィールドを移します。このレポートでは、RoomClipユーザーが睡眠に関する投稿を最も盛んに行っている場所として「寝室」にフォーカスし、関連する様々なデータを抽出・分析していきました。
まずは、この10年ほどの間で「寝室」とインテリアスタイル関連タグが併用されている投稿率の推移を見ました。

RoomClip全体の傾向として、2010年代はインテリアスタイルに関連する投稿率が急成長したことは過去レポート「五感を満たす、『心地よい暮らし』へ。ポスト『映え』世界の価値とは」でも報告した通りです。このトレンドが寝室でも連動していることが、上記グラフからわかります。2010年代に入りずっと上昇していたインテリアスタイル系タグの投稿率は、住まいと暮らしのコミュニティ全体のトレンドが「心地よい暮らし」へとシフトをし始める2020年以降、緩やかながらも下降しています。
2010年代に起きていた「寝室」のトレンドを少し具体的に振り返ってみます。

上は、「寝室」の投稿に付与されていたノウハウ系のタグ上位3つを年毎で表したものです。
2010年代中盤から、DIYや収納などの主要ワードとともに「ステンシル」「アクセントクロス」などのデコレーションに関連するタグ、つまり、「見た目」=「映え」の追求にまつわるタグが上位に入っています。
当時の実例写真を見ても、「インダストリアル」「西海岸」「カラフル」といったインテリアスタイルの世界観がリビングやダイニングだけでなく、寝室でも表現されていたことがわかります。
3:「心地よさ」へとフォーカスがシフトした2020年代の寝室づくり
2020年代に入り、寝室におけるインテリアスタイル系タグの投稿率は下降する一方、「心地よさ」に関連するタグは急激に増加していきます。

上のグラフは、寝室の投稿に付与された「癒し」と「くつろぎ空間」それぞれのタグの投稿率を年推移で表したものです。いずれも2010年代終盤から伸び始め、ここ1年で急激に上昇しているのがわかります。
この変化は見た目にも現れています。近頃は、2010年代に見られたようなインテリアスタイルを反映するカラフルで華やかな寝室よりも、暖色光の間接照明を取り入れ、白・グレー・ベージュなどのニュートラルカラーに統一された落ち着きのある寝室が目立つようになりました。コメントを覗いてみても、多くの生活者にとって寝室づくりにおける重要なテーマの一つが心地よさになっていることがわかります。
本当に我が家にとって一番大事なお部屋といってもいいと思います❣️
「心地よい寝室」を構成する2つのこだわり
さらに調査を進めていくと、近年の「心地よさ」を追求する寝室づくりでは、大きく分けて2つのこだわりを盛り込むことがトレンドになっているようです。
“寝具”へのこだわり

寝室の目的である「睡眠」に不可欠な寝具。主要なアイテムである「マットレス」「まくら」「布団」の投稿率は、いずれも伸長していることが上のグラフからわかります。 最近では、品質の高さで知られる高価格のマットレスを新調したというユーザーの投稿も多く見かけるようになり、睡眠の質への投資意欲が高まっていることが伺えます。
粒綿、備長炭ビーズ、エラストマーパイプ、シラスビーズの4種類の素材を2層構造になってる7つの部屋に入れて調整してあります。
調整もマメにしてもらっているのでかなり肩こり解消されました😊
“空気の質と香り”へのこだわり

ベッド周りにとどまらず、寝室の空気を整えることへの関心も高まりを見せています。 上は、寝室における「加湿器」「サーキュレーター」「空気清浄機」のタグが付与された投 稿率の推移で、いずれも顕著に上昇していることがわかります。
(コットン100%)
肌かけケットは軽くてふわとろ仕様
マクラカバーはエアリズム
サーキュレーターは壁掛けにしました𓂅 ܸܸܸ ܸ

さらには「ルームフレグランス」の投稿率も大きな伸びを見せていました。2022年は2013年比で4.9倍も上昇しています。
空気を良質な状態に整え香りで彩るという寝室づくりのトレンドからは、見た目よりも、居心地や快適性の向上が重要視されていることがうかがえます。
4:「心地よさ」を阻むものと、解決への模索
心身ともに快適に過ごすことが命題ともいえる「心地よい暮らし」。質の良い睡眠がそれを支えるための不可欠な要素であることはいうまでもありません。住まいと暮らしのコミュニティでは、睡眠そのものにこだわることはもちろん、その空間を整え、そこで過ごす時間そのものをより価値の高いものにすることこそが「睡眠の質にこだわる」ことと、捉えられているように思えます。
このように睡眠の質の追求が進む中、パートナーと暮らす生活者にとっては大きな課題が顕在化しています。それが、睡眠における「一緒に寝る人とのズレ」です。
アパート時代はセミダブルにふたりで寝ていたので、体感温度の違いが大変でした。
シングル2台にして本当に快適です😢💓
パートナーと寝具や寝室を共にすることにおける悩みをコメントから分析してみると、「いびき・寝返り」「体感温度の違い」「生活リズムのズレ」の主に3つが、ストレス要因としてあがっています。
それらの課題の解決方法として、「睡眠環境を別々にする」という選択肢が生まれています。
ベッドを別々にする、マットレスを別々にする、布団を別々にするなどの寝具を分けるという方法から、寝室を別々にするという方法まで、何を別々にするかは家庭によって異なっています。「寝室を別々にする」という選択に関しては子どもが生まれたり、逆に独立したりなど、家族構成の変化がきっかけになることが多いようですが、最近では比較的若い年齢層の夫婦などでも初めから別々にしているケースは少なくないようです。
今回の調査では「心地よい暮らし」を目指す、住まいと暮らしのコミュニティにおける「睡眠」事情をレポートしました。そこでわかったことは、様々なこだわりがどれも「自分のため」であるということです。RoomClip Award 2022でも、トレンドキーワードの第1位は「パーソナル癒しスペース」でしたが、今後「パーソナル」という言葉は生活空間の中でますます重要視されてくると、私たちは考えています。これからの住まいにどのように反映されていくのか、引き続き注目していきたいと思います。
優しい光のランプが仲間入りして、リラックスできる心地よい場所です