2021.06.30

テレビ、プロジェクターの価値変化

昭和には「家電の王様」とも呼ばれたテレビ。ブラウン管から液晶などの薄型パネルへ進化し、大型化とともに、インテリアとしても重要な存在へとなっていきました。一般的な日本のLDK間取りにおいて、リビングの必須アイテムとして捉えられてきたテレビですが、最近は変化があるようです。

今回は、コロナ禍を経て浮き彫りになってきたテレビまわりのニューノーマル、そして台頭するプロジェクターについて、ユーザーの行動データや投稿写真とともにレポートします。

1:“インテリアアイテム”としての話題は減少した「テレビ」

この10年のテレビにまつわる大きな変化といえば、2011年の地デジ化。この頃、大画面の薄型テレビを住まいに迎えることは、多くの人にとっての憧れとなり、トレンドでした。2012年からサービスを開始したRoomClipでも、導入したテレビのブランド名やサイズ、また「テレビボード」などを設置した報告は、ポピュラーな話題のタネでした。それに伴って、リビングの写真には意識的に「テレビ」をタグ付けした投稿も目立ちました。

しかし、2018年をピークとして、リビングを写した写真の投稿に占める「テレビ」タグの利用率は連続して減少。2021年6月時点では、2018年に比べて32%減少しています。

Room No.806117 : IRODORI
このテレビボード、買って正解でした!

我が家のテレビは42インチですよ★
Room No.619091 : 1go-San
テレビボードは福岡の木工所でオーダーしました。
2,300幅のブラックウォールナットです☆

上の画像はいずれも2016年に投稿されたもの。テレビやテレビボードはリビングインテリアの中心的存在で、ソファがそこに向き合うレイアウトが定番でした。ユーザー間のコミュニケーションでもテレビ本体やテレビボードのブランドに関する情報交換が盛んに行われました。

深層学習の画像認識結果で見えた、「テレビの存在感」に対する意識の変化


投稿写真に「テレビ」タグが付けられることが減ったとはいえ、ここ3年で住まいからテレビを排除した家庭が3割もいるとは考えにくいと思われます。そこで、深層学習を利用した「テレビ」の画像認識結果についても参照しました。2019年からデータが蓄積されていますが、全写真の中でテレビが含まれる投稿はゆるやかに減少してはいるものの、その減少度合いは2019年通算と2021年の6月までの投稿水準比で10%程度です。つまり「テレビ」タグの利用は減っているものの、実際にテレビが家庭からなくなっているわけではない、という結果です。家の中にテレビはあっても、投稿者がインテリアとして意識的にテレビを話題にするケースが減少した、というわけです。「テレビの存在感」に対する意識の変化が生まれていると言えそうです。

Room No.478909 : R
テレビの存在感をなくそうと白い無地に拘ってましたが意外と柄も可愛いかも(๑˃̵ᴗ˂̵)
好きな柄なら気にならないものですね♪
Room No.188342 : puu.tuuli
買い替えたテレビの存在感がやはり半端ない…(笑)
テレビが大きくなったので,上に取り付けてた棚を外しました。
退けなくてもテレビと被ることはなかったのですが,テレビも大きくなった上にここに棚まであったら…圧迫感が出るかなぁと思い💧

2:コロナ前後で起こった、テレビ設置方法の再編成

お部屋における「テレビの存在感」について、さらに別の視点から見てみます。「テレビ」を含む単語で設置方法に関するタグを調べると、2017〜2021年のTOP3キーワードは「テレビボード」「テレビ台」「壁掛けテレビ」です(「TVボード」、「テレビ壁掛け」などの表記ゆれを含む)。年間でのTOP3は各年とも変わらないものの、月次での推移を見ると変化が起きています。「壁掛けテレビ」タグの利用率が年を追うごとに増加し、2019年に初めて単月で「テレビ台」を上回り、2020年も上昇トレンドを保ったまま再度逆転や肉薄するケースが増しています。

薄型テレビの普及当時から、「壁掛け」は理想的な設置方法として注目されていました。新築やリフォームといった住まい作りの場面でも、モデルルーム等を中心に「壁掛けテレビのあるリビング」は憧れの対象として描かれていました。見た目のスタイリッシュさはさることながら、長年リビングの面積の一部を占めていたテレビボードやテレビ台が不要となり、空間をより有効活用できることも魅力の理由でしょう。しかし、現実は施工難易度が高く、メジャーな設置手法として支持されるには至りませんでした。それが、近年、導入に踏み切るユーザーが増加しているのです。
 
壁掛けの投稿が増加を始める2018年頃を振り返ってみましょう。この頃、持ち物の見直しや処分、ミニマリストといったライフスタイル分野のトレンドを背景に、巨大な設置面積を必要とするテレビそのものを避けた「テレビのない暮らし」「テレビなし生活」といったタグが初登場しました。結果として、そのようなミニマル嗜好が大きなトレンドとなることはなかったものの、「テレビの存在感をなくしたい・減らしたい」あるいは「無駄を排除したい」という欲求が生活者の中に潜在的にあることの極端に表れた例とも言えるでしょう。

Room No.973795 : yukari
うちのテレビボードです。
とは言え、壁掛けテレビのためテレビは乗っかって居ません!
出来るだけ奥行きを小さくしたかったので、家を建てる時自分で設計図を描いて大工さんに作って頂きました。

テレビの存在感を消したくてこの壁だけはこの色にしました(*^o^*)
Room No.826635 : miomio
大型テレビを手放して…
白い壁どーーーん!で、リビングがさらに快適空間になりました(^^)

DIYノウハウの共有で現実的ではなかった「壁掛けテレビ」がリアリティのある設置方法に

この頃、RoomClipを含むソーシャル上では、2x4材を活用するアイテムなど、テレビを自分の手で壁掛けできるDIYノウハウの共有が進みました。これが当時の生活者の「テレビの存在感をなくしたい」ニーズと当てはまり、「壁掛けテレビ」の上昇トレンドを支えるかたちに。2019年9月には、ランキングの逆転が発生していることが分かります。さらにその勢いはコロナ禍によって下落することなく、ステイホームによるDIYトレンドに巻き取られる形で、引き続きテレビの「壁掛け」化を後押しする結果となりました。

Room No.294000 : chocori
壁掛けテレビコーナーをDIY☆
1.2×4の柱を2本たてます。
2.テレビ壁掛け用の金具を取り付けます。
下にはパイン材を四角く組んでアイアンの脚を取り付けた棚を、柱の2×4に固定します。
3.上部はニッチ風に棚を取り付けます。1×4を四角くく組み、背面に漆喰を塗った2ミリのベニヤを貼りました。
周りを囲むように白くペイントした杉板を貼っていきます。
4.杉板の板壁で全体を隠して完成!コンセントやテレビの配線部分はいつでも取り外しできるように、ネジ止めではなく、超強力マグネット(ネオジウム磁石)で付けています。
Room No.718131 : ikka
早速質問の回答ですが…
板壁の厚みは10mmで、
110mm幅のモノを13枚使ってます!
テレビの後ろは金具が付いてるので
板はつけていません。
ワタシは2×4の柱を5本使ってて、
両端2本に板壁、真ん中3本に
テレビを取り付けてます。
なので強度は全く問題なかったです!

こんな感じで参考に
なるかな…(´>ω<`)
また不明なことがあれば
いつでも質問ください!

3:ステータスから普遍的な価値へ。「プロジェクター」の急増と、テレビの新たなニーズ

緩やながらも確かな「壁掛けテレビ」のトレンドが見えましたが、ここでテレビそのものから、テレビで得られる「大画面」という価値にも視線をシフトしてみます。すると、目を見張る成長をしているアイテムが1つあります。「プロジェクター」です。数量としては現状テレビに匹敵するボリュームではありませんが、投稿の伸長率は著しく、特に一人暮らし世帯ではタグ利用率で2020年に2016年比で5倍となりました。

コロナ禍の2020年に成長スピードが急増。特に、同居者がおらず、コンテンツ視聴体験をスマホで完結させやすいはずの一人暮らし世帯の方が動きが顕著です。ステイホームでおうち時間の充実を求めるニーズは、コンテンツの楽しみ方にもスポットを当てました。ワイヤレスでスマホと接続できる機種がテレビと同じくらいの価格帯で購入できるようになるなど、コストパフォーマンスに優れたアイテムの充実も背景に、常時空間を占拠することなく必要な時だけ大画面ニーズを気軽に満たせるプロジェクターは「今、ちょうどいい存在」として支持されていると言えます。

Room No.5188522 : AKIRA
ベランダの出入り無視してセミダブルのベッドを窓際に寄せて
オプションの姿見にかべいっぱいのプロジェクター
これで6、7畳のワンルームでも広く感じます
Room No.1932443 : Qjira
プロジェクター側。賃貸なので設置方法に色々と苦心しました。設置を考えている方もいるかもしれませんのでよければご参考までに…

壁や天井に穴を開けられないので、突っ張りラックで天井近くに棚を作ることにしました。

最後に配線部分の目隠しでグリーンを置いています。

ユーザー間のコミュニケーションから見えてきた、「大画面」体験装置としてのテレビ再評価


写真に付与される「テレビ」タグが減少、プロジェクターが普及し、このまま「テレビ」の存在は緩やかになくなるのでしょうか?そうとは言えません。最後に紐解くデータは2019年から2020年にRoomClip での「テレビ」に関してやり取りされた全てのコメントから解析した、「テレビ」とともに併用された共起キーワードのランキングです。

併用されるキーワードは、今のテレビの役割を示唆しています。「YouTube」といった「動画」配信サービスを「ネット」につないで楽しむといった用途や「ゲーム機(Switch)」「レコーダー」「パソコン」のような併用される機器の広がりによるコンテンツへの親しみ、それらのコンテンツを「子ども」と楽しむといった家族でのアクティビティ意識を想起させるキーワードがいずれも急増しました。

Room No.2896727 : Misaki
テレビに動画を映して筋トレ。
毎朝(盛った。2日に1回くらい)、
あとはテレワークの合間に運動する
この時間はとても有意義でした!

緊急事態宣言が解除になったので
テレワークなくなりますが朝の運動は
続けていこうと思います😁👍💨
Room No.199149 : mekichin
テレビを55インチから77インチに買い換えました。
目的は、オンラインライブの視聴!
大画面で観るライブはやっぱり最高です。

ブランドやサイズなどに重きをおくような、ステータス的アイテムとしてのテレビの価値はやや低下しても、テレビ自体の価値が決して失われたわけではありません。大画面でしか得られない体験、時間・空間に与える価値がよりリアルに実感され、活発に話題が交換されています。

このように、コロナ禍を前後としたテレビの壁掛け化の普及加速、プロジェクターの伸長、大画面体験装置としてのテレビ再評価の流れは、テレビ業界の今後に対していくつかの示唆を与えます。

・空間からテレビの存在感をなくしていきたいニーズはありつつも、
 テレビが持つ「大画面」の体験は普遍的なニーズとして確認できること
・「壁掛け」や「プロジェクター」トレンドから見えるように
 テレビはより住まいに溶け込む形で親しまれていくこと
・スマホの普及などライフスタイルの変化に応じて
 コンテンツは多様化し、使われ方はドラスティックに変化すること

最後に、RoomClipをはじめ生活者の間で、最近シーリングライト型のプロジェクターが注目を集めています。これを利用する住まいの投稿では、従来のテレビにはなかった暮らしで活用される大画面のシーンも生まれています。時計や風景を壁に常時投影する装置として親しまれるなど、必要な時にコンテンツを楽しむためだけでなく、暮らしの些細な場面にまで寄り添う役割を果たしているのです。これが生活者に求められる背景には、在宅ワークの増加など、ライフスタイルの変化も見逃せません。今後も時代や技術がもたらす暮らしのアップデートによって、テレビをはじめとした大画面が新たな価値をもたらすシーンが期待されます。

Room No.1225037 : puritan_r
プロジェクターで映画を見ない時は
壁時計にする時も🤭
確実にみんなに時間が伝わります🤣
みんなリビングに集まってくるので
騒がしい方が多い我が家ですが😅
最近はおうち時間を楽しんで大切にするようにしています❤️
Room No.1600781 : Hiro
引っ越したばっかですごくシンプルに、、、なってしまった笑、
シーリングライト付きのプロジェクターがポイント。
テレビ台必要ないし、スピーカーも天井に付くので部屋全体に音が広がります

このレポートの調査メンバー

  • 研究員
    竹内 優
  • 所長
    川本 太郎