2022.05.10

RoomClipの検索行動をクラスタリングして分かった、5つのユーザーペルソナ

RoomClipは、5月2日にサービス開始から10周年を迎えました。今回は、RoomClipユーザーにスポットをあて、その検索行動を分析しました。
分析にあたり使用したのは「クラスタリング」と呼ばれるデータ解析手法です。この手法を用いて弊社エンジニアがユーザー約30,000人による検索キーワードを分析したところ、RoomClipを利用する住まい・暮らしに関心が高い生活者は、大きく5つのグループに分類できることがわかりました。
分類されたこの5つのユーザーグループをさらに定性的に分析し、それぞれのグループを「RoomClipマジョリティ層」「家づくりこだわり層」「暮らしの工夫層」「DIY好き層」「一人暮らし層」と名付けました。

本レポートでは、調査に用いた「クラスタリング」について解説するとともに、各ユーザーグループの特徴を、検索キーワードや保存をしている投稿などの情報とあわせて詳報します。

クラスタリングとは

ある集合を「クラスタ」という部分集合に分けることを、「クラスタリング」と呼びます。この時、クラスタは以下の性質を持ちます。

1. 同じクラスタ内の対象は互いに似ている
2. 違うクラスタにある対象は似ていない

クラスタリングについて理解するにあたって重要となるのが、各クラスタの意味や中身は事前に定義されておらず、後から解釈する必要があるということです。 というのも、クラスタリングは探索的なデータ解析手法であって、分割は必ず分析者による何らかの主観や視点に基づいているからです。

例えば「北欧好き」のクラスタがあったとして、このクラスタは「ホワイト好き」のクラスタとも解釈できるかもしれません。どちらの解釈も正当化される可能性があり、これは普遍的でも客観的でもありません。手法によっては、そもそも「北欧好き」のクラスタは出現しないかもしれません。このように、クラスタの解釈は複数存在し得るわけです。

それでは、正しいクラスタ数はどのように決めればいいのでしょうか。クラスタリング分析においては、クラスタ数の妥当性は、「分析者が分割結果を解釈できる」状態であれば正しいクラスタ数である、と考えます。

これらの前提を元に、今回の調査では、2021年にRoomClip上で検索を行った回数が上位のユーザー、29,810人を5つのクラスタに分けました。 ユーザーを3次元空間に投影して5つのクラスタを色分けしたのが、上の図です。1つの点が1人のユーザーを表しています。5つのうち1つは隠れてしまって見えていませんが、それぞれの点が同じ色で集合を形成しており、基本的には正しく分割できていると言えそうです。これを受け、それぞれのクラスタの「投稿行動」「検索行動」「画像の保存行動」を分析し、5グループの特徴別に分けました。 次の章では、それぞれのグループについて詳しく解説します。

※クラスタリングの具体的な手法については、本レポートの末尾に記載しています。

1. RoomClipマジョリティ層

全体の61.4%と、過半数以上を占めるのが「RoomClipマジョリティ層」と定義したグループです。

このグループが投稿する際によく使用するキーワード(タグ)の特徴を見てみると、上位に「ニトリ」「IKEA」「無印良品」「ダイソー」「セリア」といったコストパフォーマンスの優れたブランドが名を連ねます。また、「クリスマス」という季節行事がランクインしているのが特徴的です。 このグループがよく検索するキーワードには「家族」や「3LDK」が上位に登場しており、ファミリー世帯が中心であることがわかります(これは実際のユーザー登録データからも判明しています)。

このグループが参考にしている写真(保存をしている投稿)の上位5枚を見てみましょう。1位は収納に関するノウハウですが、他は全て家のエリアごとに撮影された、そのエリアの全体像が伝わる写真です。

これらのことから、このグループに共通する主な関心事は大きく分けて以下の4つであると考えます。

1) 安価で入手しやすく、コストパフォーマンスに優れたブランドの活用
2) インテリアとしての観葉植物の活用
3) デコレーションで楽しむ季節行事
4) 収納術や・DIYを駆使してより住みやすく整えた暮らし

後述する、より具体的な特徴を持つユーザーグループや、トレンドを生み出すアーリーアダプター層によるさまざまなアイデアやノウハウを効率良く取り入れ、ライフスタイルやライフステージの変化に合わせて日々の暮らしをゆるやかにアップデートしているグループであると言えます。

2. 家づくりこだわり層

マジョリティ層に次いで人数の多いグループが全体の16.2%を占める「家づくりこだわり層」です。

投稿キーワードには「北欧」や「ナチュラル」といったインテリアスタイルが登場する他、「バルミューダ」という特定の家電ブランドがランクインしていることが特徴として挙げられます。 検索キーワードには、投稿キーワードと連動するように「北欧」「ナチュラル」「ホテルライク」といったインテリアスタイルが上がっている他、「ラグ」「アクセントクロス」「カーテン」などインテリアに特化したアイテムが複数ランクインしています。

参考にしている写真を見てみると、上位2枚が収納に関するノウハウで、以降はダイニング、リビングといった居室の写真が続きます。このグループの特徴を最も顕著に表している1枚は5位の写真です。完成して間もない新築住宅の居室を撮影したもので、アクセントクロスの活用や窓の設置場所、照明の配置、床材の色合いなど、家づくりの参考になる情報が多く含まれています。

これらのことから、このグループは「家づくりを検討している」または新築やリフォームなどで「家づくりを現在進行形で行っている」層であると考えます。

住宅取得層の情報収集は、かつては一部の専門雑誌に頼るしかありませんでした。ところが今は、上の世代が解決に取り組んでいる住まいと暮らしのトピックスや、DIY・リメイクがされている場所、収納・家事のノウハウを駆使してより住みやすくする方法などなど、住まいと暮らしにおける課題やその解決方法をリアルタイムでインプットできる時代です。SNSを通じて多角的に収集・把握したあらゆる情報を、自分たちらしい家づくりに活かそうとしているグループが「家づくりこだわり層」だと言えます。 ちなみに、住宅取得時に満を辞して憧れの家具や家電を導入することが通例になっていますが、近年、その場面で指名買いされるブランドの一つとして「バルミューダ」は人気を集めています。

3. 暮らしの工夫層

3つ目のグループが9.8%を占める「暮らしの工夫層」です。

投稿キーワードの1位は「収納」、その他には「RoomClipマジョリティ層」と共通する、コストパフォーマンスの高いブランドが並びます。また、投稿頻度の高いユーザーが挨拶のようなニュアンスで利用する「ありがとうございます」というキーワードが上位に上がっていることからも分かるように、5グループの中でも投稿をしている割合が高い層です。 検索キーワードのトップは投稿キーワードと同じく「収納」で、「ゴミ箱」「クローゼット」「冷蔵庫」「子供部屋」といった、ピンポイントなエリアやアイテムがランクインしています。

参考にしている写真を見てみると、全て収納に関するノウハウであることがわかります。収納はどのグループでも関心の高いトピックですが、5枚の写真とも収納にまつわるものなのは、このグループだけの特徴です。

これらのことから、このグループは日々の暮らしを快適に過ごせるよう、家の中の様々な場所をより使いやすく整えることが最大の関心事であると言えます。

これまで、住まいには押入れや階段下、洗面やシンクの下、下駄箱の中や冷蔵庫の中といった、そのまま利用するには使いこなしづらい場所がたくさんありました。それぞれの場所において、どこに何をどう収納するのがベストか、役立つフックやボックスは何か、突っ張り棒はどう使えば収納量を増やせるか、などの様々な工夫が常に試行錯誤されています。収納をはじめとする、暮らしにおけるちょっとした「うまくいっていないポイント」を解決することに取り組んでいるのが「暮らしの工夫層」だと考えます。 ちなみに、2010年代後半からは、収納に加え掃除や洗濯といった家事全般についても、工夫やノウハウの積み上げが進んでいます。

4. DIY好き層

4つ目のグループが7.6%を占める「DIY好き層」です。

投稿キーワードの上位に「DIY」「ハンドメイド」「ニトリ」「ダイソー」「セリア」「フェイクグリーン」がランクイン。投稿割合は5グループの中で最も高く、45.9%にのぼります。 検索キーワードは投稿キーワードと同様「DIY」が上位ですが、「すのこ」「ディアウォール」「ラブリコ」といった人気のDIYアイテムや、「和室」といった特定の部屋がランクインしているのが特徴です。「ガーデニング」への関心が高いこともわかります。

参考にしている写真上位5枚を見てみると、当然その内容は全てDIYで、その中でもトップ2枚は収納に関するものであることがわかります。いずれも家の中のちょっとした空きスペースに、DIYで収納スペースをつくった様子です。3位はテーブルのDIY、4位と5位はいずれもインテリアアイテムで、窓付きの間仕切りとカフェ風ショーケースのDIY実例です。

これらのことから、このグループは家の中のちょっとした「不便」や「こうだったらいいな」を解決することに前向きな層だと考えられます。「暮らしの工夫層」とモチベーションは似ていますが、自らの手でぴったりなモノを生み出す工程と、完成品を共有することを楽しんでいるのが特徴と言えるでしょう。

既製品の導入だけでは解決できない暮らしの問題やこだわりに対して、生活者が用いてきた解決方法のひとつとしてDIY・リメイクがあります。とくに100円ショップで揃う材料を使ったDIY・リメイクのノウハウは手軽さとその再現性の高さから、急速に広がりました。本格的にDIYを楽しむユーザーの中には壁紙の張り替えや塗装から、椅子や机などの家具の制作に至るまで、DIY・リメイクの対象を幅広くカバーするケースも多く見られます。前述したカフェ風ショーケースなど、人気を集めたDIYやリメイクアイテムが大手ブランドなどによって商品化されるケースも、最近では度々発生しています。

5. 一人暮らし層

5つ目のグループが5.1%を占める「一人暮らし層」です。

投稿・検索ともに「一人暮らし」「1K」「賃貸」というキーワードが上位にランクインしました。全体の5%と5つの中で最も小さい層ですが、投稿割合は30%と高いのが特徴です。「一人暮らし」「ワンルーム」「賃貸」「1K」「6畳」「狭い」という検索キーワードからも、このグループに属しているユーザーのリアルな住環境が伺えます。 参考にしている写真は、どれも小ぶりな住まいの収納とレイアウトに関するノウハウに特化したものです。

2012年にルームクリップがサービス開始した当初、利用者の中心はファミリー層でした。そこから2010年代後半かけて徐々に若い一人暮らし層の利用が進み、さらにコロナ禍で部屋で過ごす時間が長くなったことで、ますますこの層の利用が活発になりました。収納やDIYのノウハウ、コストパフォーマンスの高いブランドの活用など、2010年代の中頃までにファミリー層の間ですでに定番化した暮らしの基礎的なノウハウを、スマートに「いいとこ取り」して自分たちの暮らしに当てはめています。一方、プロジェクターの導入や韓国インテリアなど、これまでになかった新たなトレンドを生み出し、逆にファミリー層がそれらを取り入れているという動きも見られます。

この様にクラスタリングを用いてユーザー行動を分析したところ、一つの解釈として、RoomClipのユーザーコミュニティではあるジャンルに特化したユーザーグループがいて、そこから発信される情報を効率的にキャッチし暮らしに取り入れている層がいるという構造が見えてきました。

この関係性は、各グループの検索キーワードからも見て取れます。「RoomClipマジョリティ層」は「収納」「DIY」のほか「リビング」「キッチン」「トイレ」など、場所を検索しているという特徴があります。「より良くしたいけど何から手をつければいいのかわからないから、まずは場所から検索する」という問題解消への思考プロセスが垣間見えます。一方、ジャンルに特化したグループでは、場所の検索ワードがほとんど登場しません。その代わりに、具体的なモノやカテゴリ名、ノウハウの名称などが並びます(「住まいこだわり層」は「アクセントクロス」「カーテン」、「DIY好き層」は「ラブリコ」「ディアウォール」、「暮らしの工夫層」は「冷蔵庫」「ゴミ箱」など)。

それぞれのグループは今後も相互に影響を与え合いながら、より幅広い創意工夫やノウハウを生み出し、発展していくことでしょう。今後も、RoomClip住文化研究所では様々な視点からユーザー行動を分析していきます。

分析手法の概説

今回使用したクラスタリングの手法について概説します。
まず、2021年度に最も検索しているユーザー29,810人と最も検索されている上位5000個の検索ワードをピックアップしました。5000個の検索ワードの中には「ダイソー 収納」のようなスペースを含んだAND検索を含んでいるため、単語数としては3508個になります。次に、ユーザーを3508次元のベクトルとして表現しました。このベクトルの一つの次元はユーザーがある単語を検索したかどうかを示しています。その後、主成分分析により5次元のベクトルへ次元削減を行いました。最後に、外れ値を除外した後に各次元において標準化を実施しました。

k-meansを用い、エルボー図を図示してみると上図のようになります。よって、クラスタ数は「5」としてk-meansによりクラスタリングを実施し、各クラスタを調査したのが本レポートです。

このレポートの調査メンバー

  • 所長
    川本 太郎
  • 研究員・エンジニア
    冨田 寿弥