1:「飾る植物」はグリーンから花へ主役交代
もともとRoomClipを利用する「インテリアこだわり層」の間では、サボテンやエアプランツなどが「飾る植物」として人気でした。世間では多肉植物ブームが起こり、その流行に応えるべく、手頃でクオリティの高いフェイクグリーンがバリエーション豊富に登場しました。
RoomClipではこの時期、そうしたグリーンを飾る器として空き缶をリメイクする「リメ缶」という文化が隆盛しました。
下の投稿はそれぞれ2014年、2016年に撮影された写真。リメ缶などをDIYしたり、友人間で贈り合い、ディスプレイした写真をもとに多くのコミュニケーションが生まれました。
しかし2016〜2017年頃をピークに、その潮流は落ち着いていきます。フェイクグリーン、エアプランツ、サボテンの投稿数を見ると、2020年は2017年からいずれも7〜8割減少しました。
一方で、この5年間で投稿数が増加したのが「花」です。
下記の写真は、上で紹介したのと同じユーザーがそれぞれ2020年、2021年に投稿したもの。インテリアの雰囲気が変化すると同時に、植物のディスプレイも様変わりしました。
実際、RoomClipのアクティビティデータをみると、「観葉植物のある暮らし」や「グリーンのある暮らし」といったグリーン関連の代表的なタグが横ばいなのに対して、
「花のある暮らし」「ドライフラワーのある暮らし」といった花関連の投稿は大きく増加しています。2016年と2020年を比べると、
花関連の投稿水準は5.7倍にまで大きく伸長しました。一方で、グリーン関連の投稿は2017年以降ほぼ横ばいにとどまり、2019年を境に主役が逆転したことがわかります。
グリーンに比べると、定期的に変化させることで季節感を取り入れやすかったり、手入れが楽だったりすることが、花やドライフラワーの伸長の要因だと考えられます。
大好きなネェイティブドライフラワーと、コレまた大好きなモロッコスツールとご一緒にパチリ( ∩'-'📷⊂ )
生花も飾りたいけど、家にいる時間が少ないので、長く鑑賞できるドライフラワーを部屋のあちらこちらに飾っています(*^。^*)
皆さんは飾るなら、生花派?ドライフラワー派?それともグリーン派?
花器の投稿数も、連動して推移
花の隆盛に伴い、花を飾る際の必需品となる花瓶やフラワーベースなどの花器に関する投稿も4倍に伸長していることも興味深いポイントです。
高価なデザイナーものや作家ものを取り入れている人もいますが、100円ショップや空き瓶などを上手に活用して、カジュアルに花を飾ることを楽しんでいる人も多いようです。
ステキなオブジェになる大好きな
フラワーベース(*≧∀≦*)
でもやっぱり、
季節のお花が部屋にあると
それだけで気分が安らぎます✨
梅雨入りしたけど、ここは華やかで明るい気持ちになれます👍
花器は、手前が200円くらいのプチプラ花瓶、奥はドレッシングやアップルタイザーの空き瓶を再利用してます👍
2:「育てる植物」の動きは隆盛
暮らしの中の植物との関わり方は「飾る」だけでなく「育てる」もあります。「飾る植物」としては花が優勢ですが、ガーデニングや園芸などの「育てる植物」に関連する投稿はどうでしょう。
ガーデニングや園芸は、年々増加。
「庭」「ガーデニング」などの投稿水準を見てみると、毎年5月にピークがある周期型パターンを描きながら安定して増加傾向にあることがわかります。特に新型コロナの影響を受け、2020年の関連投稿数は過去最多となりました。屋内におけるグリーンが横ばいであることとは対照的です。
コロナがきっかけでガーデニングをはじめた人も
同じ動きは「ガーデニング初心者」というタグでも見られ、2017年の投稿に比べて2020年は投稿数が1.7倍に増えました。また、RoomClipユーザーへのアンケートでも宅トレやDIYに続く人気のアクティビティとしてランクインしました。
3:「季節を感じる暮らし」と花の親和性
「飾る植物」がグリーンから花へとシフトしている理由はなぜでしょう。ここで注目したいのは「季節」に関連するRoomClipでの投稿データ推移です。
「季節」にまつわる投稿は、かつてないほど増加中
「季節を感じたい」「季節を感じるインテリア」など、季節がキーワードとなるタグの投稿枚数は年々増加傾向にあり、2016年に比べて2020年は3.5倍の投稿水準となっています。
それらの投稿の主な特徴として挙げられるのは、節句を祝う飾りつけやしつらえ、旬ものを取り入れた食卓風景、梅仕事や味噌作りなどの伝統的な手仕事、そして季節の花です。1枚の写真で伝えられる情報量のバランスと質が重要なSNSの世界において、花はグリーンよりも季節感が伝わりやすく、さらに華やかさかもあります。何より、グリーンのように水やりなどの手間がかかりません。
特に、コロナ以降、家で過ごす時間が増え、多くの人にとって季節の移り変わりが感じづらくなっていることも、このトレンドを後押ししていると考えられます。
ジメジメとした空気を変えたくて、テーブルにブルーのクロスをかけて気分転換。
そして、週末にお迎えしたピンク色のアスターをテーブルに。
オマジオのフラワーベースには庭に咲いたオルレアと蕾から花が咲き実になったニゲラを飾ってみました。
可愛いお花達に元気をもらって頑張ろう。
82%が「家に花を飾る」。半数近くが、月1回以上の頻度
RoomClipユーザーへのアンケートでは、82%が「家に花を飾る」と回答。約半数が月に1回以上の頻度で花を飾っていることがわかりました。多くの人が、月や週など、区切りとして花を取り入れていることがわかります。最近ではお任せでアレンジや切り花が自宅に郵送されるサブスクリプションサービスを利用しながら、「花のある暮らし」を手軽に手に入れている人も多いようです。
庭の花、産直の花、実家の母が育てた花、お花農家さんにいただいた花、何かしらのお花を玄関やリビングに飾ってお花から季節を感じたいと思っています。
観賞を目的として植物を住まいや暮らしに取り入れる営みの歴史は大変古く、約4000年前の古代エジプトでも庭園で植物が栽培されていたといいます。日本でも古くから植物は生活に密着して親しまれ、江戸時代には園芸が一大ブームとなっていました。
そんな長い長い「暮らしの中の花とグリーン」の歴史の中では、RoomClipに記録されたたった10年分の住まいの記録はとても短いかもしれません。ただその間にも、生活者が様々に工夫しながら楽しむことで、トレンドやストーリーが生まれていることがわかりました。
昨年からのコロナ禍を受け、暮らしや住まいの中に自然を取り入れる動きは加速しています。今後もさらにトレンドやストーリーが生まれていくと考えられます。