若年層を中心とした切り花消費の増加と、高まるSNSでの関心
株式会社大田花き花の生活研究所が総務省のデータを元にまとめた調査によると、コロナ前の2019年から世代別に切り花の支出金額を比較した結果、若年層を中心とした切り花消費の大幅な増加が見られました。
特に29歳以下では2019年比で412%、30〜39歳では107%と著しい伸びを記録しています。
RoomClipのデータを参照しても、花への関心度は年々上昇していることがわかります。「花のある暮らし」を含むキーワードの投稿者率は2018年以降右肩上がりで増加し続けており、その人気が伺えます。
一輪挿しから枝物まで。データと実例から見る「花のある暮らし」のトレンド
RoomClipに投稿された画像の定量・目視調査をもとに、現代の住まいにおける「花飾り」の空間やスタイルを分析すると、近年大きく伸びている「3つのトレンド要素」が見えてきます。
1. 飾り方の変化:手軽な「一輪挿し」と「ショート丈」の台頭
花を飾るスタイルのうち、依然として最も主流なのは複数本を束ねる「複数本・ブーケ」(61.6%)や、長さがおおよそ30cm〜70cm程度の「ミドル丈」(49.4%)です。
しかし近年、確実な上昇傾向を示しているのが、目安3本程度までの「一輪挿し」とおおよそ30cm以下の「ショート丈」です。
2020年には20%台だったショート丈の割合が2024年には約45%にまで大きく伸びており、ミドル丈に並ぶほどの勢いを見せています。一輪挿しも全体の34.6%を占め、手軽に生活に花を取り入れやすい形式が現在の確固たるトレンドとして定着していることがわかります。
また、ショート丈の飾り方として、小さな花瓶を複数並べる事例も増加傾向にあり、短い花を少量飾る工夫として、新たなスタイルも生まれています。
2. 花材とスタイルの変化:「韓国インテリア」と「枝物」の定着
インテリアスタイルのタグ分析において、ここ数年で急増したのが「韓国インテリア」です。このトレンドの代表的なアイテムとして「チューリップ」が人気を集めており、白やベージュを基調とした空間に黄色のチューリップなどを合わせるスタイルがブームとなりました。
また、コロナ禍を契機に人気を集め、花材全体の13%を占めるまでに定着したのが「枝物」です。
特に花材別ランキングでも枝物が上位5種のうち、3種にランクインする結果となりました。
その中でも1位となった「ミモザ(ミモザアカシア)」は、3月8日の「ミモザの日」の定着なども後押しとなり、RoomClipの中でも広く人気を集めています。
ふわふわの黄色い小花がとても可愛くて癒されます。
リビングが明るくなって嬉しいな。
また、同じ枝物でも、ドウダンツツジなどの枝物は、おおよそ70cm以上の「ロング丈」(全体の15.2%)としてダイナミックに飾られるケースが多く見られます。
3. 飾る場所の広がり:王道の「LDK」から「ディスプレイコーナー」へ
設置場所のトップ3はダイニング(20.0%)、リビング(18.8%)、キッチン(18.2%)となっており、主要3箇所(LDK)が依然として中心です。 一方で、設置場所のタグ分析において近年急伸しているのが「ディスプレイコーナー」です。
テレビ横、キッチンカウンターの空きスペース、玄関ニッチなどを「見せるスペース」として活用するユーザーが増加しており、「ディスプレイスペースまたはディスプレイコーナー」を含むタグの付与水準は2019年比で3.36倍にまで急増しています。
前述した「小さな花瓶を複数並べる」ショート丈スタイルも、こうした小さな空間との相性が良く様々な実例が多く投稿されています。
なるべく外出しないために、お庭の植物を飾っています。
プランターに植えたネモフィラが想像以上に大きくなり、切り花にしてあちこちに生けています。
切り花でも、次々とかわいいお花を咲かせてくれています。
「憧れ」から「実践」へ。日常化するからこその課題
このような多様な花飾りのスタイルが定着した背景には、生活者の意識の変化があります。 コメントのテキストマイニング分析(動詞)を見ると、「買う」というワードが近年大きくランクアップし、逆に「憧れる」の順位が下がって「植える」「育てる」が新たにランクインしています。かつては特別な日にもらうもの・憧れるものだった花が、日常的に「自分のために買う」実践的な存在へとシフトしていると言えます。
一方で、日常化が進んだことで新たな課題も顕在化しています。 コメント内で使用される形容詞の分析では、「長い」「難しい」というワードが新たに上位にランクインしました。
「少しでも長く愛でていたい」「長く手間いらずで楽しめる」といった花の保ちの良さを重視する声があがる一方で、「管理が難しく短命だった」「お花を生けるバランスが難しい」といった、日々の手入れやアレンジメントに対するハードルを感じているユーザーも多く存在します。
さらに、ユーザーアンケートの自由回答からは、花が日々の暮らしに身近になったからこそ生じる「生活環境との摩擦」というリアルな悩みも見えてきました。
とくに目立つのが、「猫が悪戯するのでリビングには花が飾れません」「ペット(犬)を飼っているので、百合は飾らないようにしています。」といった、ペットと暮らす上での切実な制約です。
RoomClipでも「ねこと暮らす」といったペットとの暮らしの投稿は年々急増しています。そんな中、花とペットを暮らしの中でどう共存させるかなどの新たな課題が見えてきています。
と思ったけど、調べると桜の花びらを少し食べるくらいなら大丈夫だけれど、やっぱり蕾や熟していない果実は猫にとって毒らしい。
ということでやっぱり写真とったら花を飾るのはトイレです🤣💦
実際に、ユーザーアンケートの全体結果を「花を飾る喜びと悩み」として整理すると、暮らしの中で生じているこの「理想と現実の摩擦」がより鮮明になります。
アンケート回答者の66.4%が自宅鑑賞用に切花を購入しており、「癒される」「気分が明るくなる」といった花がもたらす心理的な喜びは非常に大きいことがわかります。 しかし一方で、先述した「ペット」との共生問題に加え、「日持ち・お手入れの手間」「始末が面倒(片付け)」といった、日常的に維持管理していく上での現実的な課題が立ちはだかっています。このほかにも自由回答では、「花粉がたくさん落ちる花だと台が汚れやすい」「稀に虫がわくこと」など、衛生面・安全面での物理的なハードルも挙げられています。
若年層を中心に確実に住空間へ浸透した「花のある暮らし」。今後は、より手軽に、そして長く花を楽しむための「飾る難しさ」を解消するアプローチに加え、ペットとの共生や手入れの負担軽減といった生活上のハードルに配慮した提案が、さらなる需要開拓の鍵となるでしょう。
本レポートの調査概要について
本レポートの分析および各種パーセンテージの算出は、以下の調査結果に基づいています。
投稿の定量調査(対象:約6.3万件)
2020年〜2024年にRoomClipへ投稿された写真のうち、「花のある暮らし」に関連するタグが付与された約6.3万枚の投稿データ、および約1,400件のコメントデータを抽出し、タグの付与率や頻出ワードの傾向を総合的に分析しました。
投稿の目視調査(対象:約500件 / 花の種類については上位600件)
実際の飾り方や花瓶の種類、設置場所、丈の長さなどを詳細に把握するため、約500件の投稿画像を対象に、研究員が直接目視で4カテゴリ・9項目に分類し集計を行いました。(※写っている「花の種類」については、生花が目視できる投稿のうち「保存数」が多い上位600件を抽出し、カウントしています)
アンケート調査(有効回答数:825名)
RoomClipの全ユーザーを対象に「花を飾ること」に関するWebアンケートを広く募集し、825名から有効回答を得ました。






















